※ 事例公開日:2019年7月26日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
建築・構造物や工業製品を彩る鮮やかな塗料には、さまざまな色があり、さらに特殊な機能を付与した塗料が多く発売されています。創業以来90年近く日本の塗料製造をリードし続けている総合塗料メーカーの大日本塗料株式会社は、トップシェアの重防食・建材用塗料から家庭用塗料まで多彩な製品をラインアップしています。同社では関連企業のThai DNT Paint(以下Thai)で暫定的に使用していたExcel VBAによる配合システムを、Forguncyを活用することで、短期間でWebアプリに移行することができました。開発を担当した管理本部システム部課長代理 猪口高士様にお話しを伺いました。
【課題】半年以内にWebアプリへ移行することが条件
ビジネスの要となる「配合システム」
多彩な塗料を製造・販売しているThaiで取り扱う商品数は膨大です。多彩な色の種類に加えて、用途別や機能別に異なる原料が使用されています。また、納品先に向けてカスタマイズされた製品も少なくありません。
猪口様は配合システムについて、次のように説明します。「製造する塗料に、どのような原料をどのくらい使用するか、どのようなプロセスで製造するかを記載した設計図やレシピが必要になります。この管理を行うのが配合システムです。『仕様』は製品ごとに決められていますが、既存製品でも納品先の要求に合わせて変更する必要があります。また、新製品開発には新たに配合を作り、基幹システムに登録する必要がありました。」
たとえば、東京スカイツリーや東京駅のリニューアルなどに使用された塗料には、耐久性を高めるためにフッ素が配合されています。新しい機能を付加したり、環境負荷の低減を実現するためには、新しい原料を使用するなどの工夫が常に必要になります。
管理本部システム部課長代理 猪口 高士様
「既存製品の仕様変更や、新商品の場合、確定した配合・製造方法を基幹システムに登録する必要があります。さらに基幹システム登録後には、原料手配や生産設備の確定などの一連のプロセスが控えております。その最初のプロセスである配合の登録システムにはスムーズに稼働することが求められております。」(猪口様)
サブシステムと言えども、配合システムは当社のビジネスの要ともいえる重要なシステムなのです。
Thaiでは基幹システム変更により、暫定的なExcel VBAによる配合システムを使用
Thaiの基幹システムは日本と同じ基幹システムを導入する事が当初より計画されていました。
「Thaiの基幹システムのライセンス更改時期が迫っていたため、それに合わせた作業スケジュールで進める必要がありました。実際は基幹システムの移行だけでぎりぎりというのが実情でした。いくつかあるサブシステムは暫定措置で乗り切るしか無いといった状況でした。」と猪口様は当時の内情を振り返ります。
「配合システムは、もちろん日本でも使用しています。しかし、ライセンス・言語などの関係によりThaiではそのまま使用できない事情がありました。Thaiでは独自に開発した配合システムを使用していましたが、このシステムは新しい基幹システムとの連携が難しいと言う問題がありました。しかし、配合システムがなければ、業務が停止してしまいます。」(猪口様)
そこで窮余の一策として行われたのがExcelとマクロで開発したシステムの使用でした。
「移行期間がタイトで、人員も限られている。サブシステムまではとても手が回らない。とりあえずExcelとマクロを使った代替システムを暫定的に使用して欲しい。基幹システムの移行作業終了後に、すぐに配合システムの移行にとりかかる。そう言って、現場を説得しました。」(猪口様)
運用が複雑で担当者の負担が大きくなる暫定システムの使用には、現場からの反発が非常に大きかったといいます。しかし、半年間の暫定措置ということで了解を取り付けることができました。
Forguncy導入前の課題
- 基幹システム移行にともなうサブシステムの再開発が必要
- Excelによる暫定システムは管理や運用など現場の負担が大きい
- 短期間で暫定システムをリプレースする必要がある
【導入】基幹システムとの連携性の良さが選択の決め手
データ連携と短期間開発を同時に実現できるForguncy
基幹システムの移行作業が完了したのは2018年1月でした。そこから配合システムの移行作業が始まりましたが、まず、プラットフォームの選定から始める必要がありました。
「サブシステムを開発・運用するためのプラットフォームを選定する際に絶対に外すことができない条件が基幹システムとの連携でした。配合システムでは基幹システムにデータを渡したり、基幹システムのデータを読み込んだりする必要があります。柔軟なデータ連携が可能であることが重要でした。また、Webアプリ化によるデータ共有も必須でした。」(猪口様)
プラットフォームの選定にあたっては、Forguncyのほか、2〜3の候補が挙がったといいます。しかし、基幹システムとの柔軟な連携が可能なこと、短期間かつ少ない人的リソースでも開発が可能なことが評価され、Forguncyがサブシステム構築のプラットフォームとして採用されました。
2018年2月から始まったプラットフォームの検討は、3月中旬にはForguncyに決まり、いよいよ移行作業が始まります。しかし、実作業に入る前にいくつかの準備作業が必要でした。
実質4ヶ月の開発期間で配合システムのアプリ化を実現
「社内にForguncyの経験者が一人もいないため、Forguncyのパートナー企業で当社の業務を熟知している株式会社ヤマトシステム様に導入教育を依頼しました。また、開発期間中の技術相談や新しいプラットフォームを使用する際の技術的なサポートの協力も得ました。」(猪口様)
「ビジネスロジックをWebアプリにどう実装したいかという点は、自分たちが一番良く理解しています。データ連携という専門性が要求される部分の開発については株式会社ヤマトシステム様に委託することで、アプリ開発に専念できる環境を整えました。」(猪口様)
3月から始まった配合システムのWebアプリ化作業は4ヶ月で完了し、7月からは暫定システムに代わりWebアプリの運用が開始されました。
「Forguncyのわかりやすさや使い勝手の良さに加え、SIerと合理的な役割分担ができたことが短期間で配合システムをWebアプリ化できた要因だと分析しています。」(猪口様)
Forguncy導入のポイント
- 基幹システムと柔軟に連携可能
- Webアプリでデータ共有可能
- 開発期間が短期間
【導入効果】配合システムのWebアプリ化により業務の効率化を実現
煩雑で負担の大きかったExcel暫定システム
Excelで構築した暫定的な配合システムではマクロを使用しているとはいえ、ファイル名や保存先など「運用」でカバーする範囲が広く、現場業務の大きな負担になっていたといいます。
「Thaiで取り扱う品目は日本よりもかなり少ないのですが、それでも数千品目はありました。仕様を変更する際、基幹システムには改版履歴が残らない仕組みである為に、改版前の仕様も管理する必要がありました。そのため、ファイルサーバーを保存エリアと作業エリアを分けて使用するなど、煩雑な運用にならざるを得ませんでした。」(猪口様)
また、担当者が作成・修正した仕様は、ワークフローに従って確認・承認された後に基幹システムに登録されます。
「Excelだと、1つのファイルに対して同時に作業することができないため、ワークフローが滞るという問題も現場から指摘されていました。」(猪口様)
現場の運用負担だけでなく、業務の効率化という面からも、暫定システムの早急なWebアプリ化は最重要の課題でした。
効率的な配合システムをWebアプリで実現
7月から運用が開始されたWebアプリによる配合システムの運用にまったく問題はなかったと猪口様は明言します。
「Excelによる暫定システムと同じ操作、同じ画面なので、導入教育などは特に必要ありませんでした。担当者や管理職が同時に同じデータを閲覧し、入力することも可能になったので、ワークフローもスムーズになりました。」(猪口様)
また、暫定システムのときに発生していた不整合エラーもゼロになったといいます。暫定システムではエラー発生のたびに目視でデータを確認し、手動で修正することで対応していました。
「Excel VBAを変更しようとすると、数千ファイルあるすべての仕様書のマクロを更新する必要があります。この作業は膨大です。しかし、Webアプリであればロジックの変更は一箇所で済むため、迅速な修正が可能です。」(猪口様)
現在、日本で使用している配合システムは多大な期間と人員を投入して構築されたといいます。取り扱う品目や機能に差があるとはいえ、同等の基本機能を持つWebアプリが短期間で構築することが出来た事はForguncy採用による所が大きいと感じております。
Forguncy導入のポイントのまとめ
- 暫定システムからのスムーズな移行
- 不具合対応などが迅速に行える
- サブシステム構築の内製化の実績
今後の展望 他のサブシステムの開発もForguncyによるWebアプリで
Forguncyに移行したいExcelサブシステムはまだまだある
「社内にはExcelで作られたサブシステムがほかにもあり、Webアプリ化することで業務の効率化が期待できますが、まだ、実現できていませんが」と猪口様は打ち明けます。
「現地からは、そのほかにも機能改善などのリクエストがあり、その対応をしているところです。また、さまざまな原料を使用する塗料は、物質レベルでそれぞれの含有量を管理することをユーザーから求められますが、その機能もWebアプリに実装したいと考えています。」(猪口様)
ForguncyがExcelサブシステムのWebアプリ化を加速すると期待
社内にForguncyの経験者が一人もいなかった状態から、4ヶ月という短期間で配合システムのWebアプリ化が可能だった理由として猪口様は役割分担とサポートを挙げています。
「ビジネスロジックとAPI開発を分けた点は成功だったと自負しています。また、テクニカルサポートも分かりやすく助かりました。回答のメールにサンプルコードが添付されていることがあり、これがとても良く分かり、助けられました。」(猪口様)
Webアプリ化された配合システムは、現在、同時アクセスするユーザーが増加したために、ライセンスの追加購入も検討し始めたといいます。
当社のサブシステムのForguncyによるWebアプリ化は、今後、加速していきそうです。
全体のまとめ
- 短期間でサブシステムをWebアプリ化
- 基幹システムとの柔軟な連携とデータ供給を実現
- システムの修正や機能拡張が容易
大日本塗料株式会社様
所在地 |
〒542-0081 大阪市中央区南船場一丁目18番11号 SRビル長堀 |
主な事業 |
創業以来培ってきた防食技術をはじめとする独自技術により、地球環境や資源を護り環境にやさしい製品を生み出すとともに、環境との共生を目指した潤いのある快適な環境づくりに貢献しています。「健康で快適な暮らし」をテーマに、自然・社会・生活のすべてに配慮したクリーンな商品を提供する「環境を彩る企業」です。
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設立日 |
昭和4年7月25日 |
URL |
https://www.dnt.co.jp/ |
この事例の導入支援パートナー
株式会社ヤマトシステム
製造や物流の分野で、競合他社に勝つ為のシステム開発を30年間続けさせて頂いています。 1次元・2次元barcodeをモバイルデバイスからForguncyで活用できるソリューションも提供致します。