※ 事例公開日:2020年4月3日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
ジオスター株式会社はインフラ整備(土木工事)に使用されるコンクリート製品や金属製品を製造販売、並びにこれらの販売に付帯する工事の請負などを行うメーカーです。日本製鉄グループとして国内トップクラスのシェアを誇る技術力で、日本・海外の国土建設に寄与しています。
そんな同社では社内業務のシステム化が進まないという課題を抱えていました。この課題を解決するために導入されたのが、『Forguncy』でした。システム化推進のために活用した『Forguncy』は、やがてシステム開発だけでなく、社内のシステムに対する雰囲気にも変化をもたらすことになりました。
同社でシステム開発を担当した、経営管理本部 情報通信システムチームリーダー 真辺純裕氏、情報通信システムチーム 松岡里沙氏、さらに実際の開発業務を担った、ソルネット 第二SI推進部マネージャ 柳楽(なぎら)英光氏にお話を伺いました。
【課題】レガシーなワークフローの改革が喫緊の課題
社内にあふれる“Excel”
「率直なところ当社のIT化は非常に遅れていました。それに加えて、社内にはシステムを業務に活用するという意識が希薄でした」と社内のシステム化を推進するために、2017年に執行役員 情報通信システムチームリーダーとして入社した真辺氏は、当時の状況を打ち明けます。各種アプリケーションは導入当初の状態のままで運用を続ける場合が少なくありませんでした。
もちろん売上管理や財務・会計管理を行う基幹システムは導入されていましたが、基幹システムに連携するサブシステムが極端に少なく、その多くが各部署で自作したExcelで処理されていました。
ジオスター株式会社
経営管理本部情報通信システム
チームリーダー 真辺純裕様
「たしかにExcelを使えば基幹システムにデータを入力するための加工に人手をかけて、『がんばればできてしまう』のですが、システム化できるところはシステム化して省力化し、コア業務にリソースを投入しないと、これからの時代に生き残っていくのが難しいことは誰もが感じていたと思います。しかし、それにどう対応するかの答えは見つかっていませんでした」(真辺氏)
遅れていたのはIT環境の整備だけではなかった
基幹システムが導入されていても、それと連携するサブシステムが整備されていなかった同社の問題は、基幹システムに入力するデータを作成する課程にありました。担当部署がそれぞれExcelでデータを整理して、必要な数字がまとめられ、紙に出力されて、次の部署に送られる。受け取った部署では、紙のデータを読み取り、自部門のExcelに手入力する。このようなデータのリレーと再入力が、社内の至るところで発生していたといいます。
それには、社内で長年培われた文化も影響していたと、情報通信システムチームの松岡氏は指摘します。
「たとえば営業部では、データ入力は内勤の社員が担当するなどの役割分担ができていました。そのために、全員が社内をシステム化するという雰囲気ではありませんでした」(松岡氏)
ジオスター株式会社
経営管理本部情報通信システムチーム
松岡里沙様
Forguncy導入前の課題
- IT環境の整備が不十分
- データの再入力などの非効率業務が多い
- ITを業務に活用するという雰囲気が希薄
【導入】きっかけは、Excel VBAによる設備管理“システム”の導入計画
急遽、Forguncyによるシステム開発を行うことに
真辺氏は当初、部署ごとのExcelによるデータ管理を減らしていき、業務には社内システムを利用するという社内カルチャーを醸成することから、社内のIT改革に取り組もうと考えていたと話します。しかし、状況は予想外の展開を見せます。
「Excelの使用率を下げようとしている矢先に、ある工場の発案で設備管理をExcel VBAによる“システム”で行う計画があることが分かりました。システムといっても、実際は巨大なワークシートです。そこで、急遽、『Forguncy』で設備管理システムを構築することを決意しました」と『Forguncy』導入の経緯を真辺氏は振り返ります。以前の勤務先で『Forguncy』を知っていた真辺氏は「Excelライク」な『Forguncy』であればスムーズな移行が可能になると、着任当初から考えていたと話します。
開発は、全社コードの設計から始まった
急遽スタートした設備管理システムの開発ですが、その道程は平坦ではありませんでした。
「設備管理システムはある工場からの発案で、主なユーザーも各拠点の工場です。現場には何度も足を運んで、『Forguncy』によるWebアプリ化にメリットがあることを説得しました。Excelファイルでは同時アクセスができない点や、拠点(工場)を横断する全社の設備を把握することのメリット、部品調達などでのスケールメリットなどを丁寧に説明することで、最終的には納得してもらいました」(真辺氏)
開発には、もう一つの問題もありました。それは、茨城、木更津、君津、東松山、金谷、橋本、福岡の各工場でそれぞれ設備コードが異なっていた点です。
「全社コードの設定から始めなければならなかったこともあり、開発期間は結果的に長めになりました」(真辺氏)
また実際の開発は、
『Forguncy』のシステム開発経験が豊富なSIerで、設備管理システムを発案した工場に近い北九州市にあるソルネットに依頼しました。ソルネットとはこれが初取引でした。
『Forguncy』のパートナー企業であり、長年、システム開発を手掛けてきたソルネットは信頼できる企業ではあるものの、初取引ということもあり現場との信頼関係を時間をかけて醸成したと真辺氏は振り返ります。当初、巨大なワークシートでのシステム化が計画されていた全社設備管理システムは、『Forguncy』によって、必要な項目をドリルダウンできる見やすく使いやすいWebアプリとして導入することができました。
Forguncy導入のポイント
- Excelライクな『Forguncy』で移行への抵抗感を低減
- Webシステム化のメリットの丁寧な説明
- 現場や開発会社との信頼関係の醸成が大切
【開発】現場を巻き込んで開発を進めていくためのシカケ
Forguncyだから可能だった、ITを現場に根付かせるための開発プロセス
『Forguncy』によるシステム開発に手応えを感じた真辺氏らが次に取り掛かったのが「置き場管理システム」でした。同社では、コンクリート製の建築資材の注文を受けると、各地の工場に製造指示が出され、製造された製品は決められた場所で検査・保管された後、出荷されます。その製品をいつ、どの場所に置いたのか、いつ出荷されたのかを管理するのが「置き場管理システム」です。
「最終的には生産管理システムを構築したいと考えていましたが、まずは、システム化が容易な工程から構築することにしました」(真辺氏)
通常のシステム開発では、業務内容をヒアリングしてシステム設計の仕様書をつくるところから始めます。しかし、今回の開発はそうではありませんでした。
「最初に画面だけ作って欲しいと依頼された際、現場ではITを業務に活用した経験があまりないというお話を伺っていたので、今後の開発プロセスが何となくイメージできました」と打ち明けるのは開発を担当したソルネットの柳楽氏です。
真辺氏は「置き場管理システム」の構築にあたり、「現場はシステムを使うことに慣れていないので、まず、システムの画面をユーザーに見せることで、システムのイメージを持ってもらうことが必要だと考えました」と話します。
画面設計の次は、データを入力したときの画面遷移を見せ、最後にビジネスロジックを搭載していくという開発プロセスは、「『Forguncy』だからこそ可能だった開発プロセスだと感じています」と柳楽氏は語ります。
株式会社ソルネット
第二SI推進部マネージャ
柳楽 英光様
現場で使う人に、使うイメージを持ってもらうことが重要
開発チームは、何度も現場に足を運び、ユーザーとなる社員に実際の画面を見せながらヒアリングを繰り返しました。
「置き場管理システム」を使うクレーンのオペレーターが、20トンもあるコンクリートの建設資材をどう運んでいるかを見た柳楽氏は「開発しているシステムが、現場ではどのような環境でどのように使われるかを自分の目で見ることで、気づくことがたくさんありました」と、現場を知ることの重要性を指摘します。実際の現場を見たことで生まれた工夫の一つが、手袋をしたままでも操作しやすいボタンの搭載です。ユーザーが使用するタブレット端末には予め用意されたソフトウェアキーボードがありますが、『Forguncy』で専用のボタンを作成することで、オペレーターの入力負荷を軽減することができました。
「画面レイアウトやユーザーインターフェースにも、現場の意見を素早く、きめ細かく反映できる点も『Forguncy』を使った開発のメリットだと感じています」(柳楽氏)
Forguncy開発のポイントのまとめ
- 「画面」を見せることで、ユーザーにシステムの具体的なイメージを持ってもらう
- 実際の作業環境と現場の意見をもとに使い勝手を向上
- 『Forguncy』であれば、自由度の高い開発プロセスが実現可能
【効果】現場の雰囲気は確実に変化している
『現場の雰囲気は確実に変わりつつあると感じています」(松岡氏)
最初に導入した設備管理システムは使用頻度が低いシステムのため、ユーザーが効果を実感するためには時間がかかると真辺氏は予想していますが、「置き場管理システム」については「早く本番運用して欲しい」「この点を改良して欲しい」という、これまでにはなかった現場の声が上がっているといいます。
「今回の開発を経験して、機能条件レベルの仕様書があれば、開発に着手できることが分かりました。そして、画面を見せることで、ユーザーと具体的なシステムのイメージを共有し、現場を巻き込んだシステム開発を行うことができました。その結果、業務でITを活用することの重要性を伝えることができました」(真辺氏)
パッケージとForguncyを使い分けることで効率的なシステム化を目指していく
現在、同社では、販売予測システムやアカウント管理システムの開発など、『Forguncy』によるさまざまなシステムの開発を進めています。
「当社の業務にマッチするパッケージはなかなかありませんが、『Forguncy』であれば最適なシステムを構築できます」(真辺氏)
経理や勤務管理など、法令との関連性が強い業務はパッケージ製品を利用し、業務に合わせたシステムは『Forguncy』で開発していくことで、社内のシステム化を効率的に推進していくと真辺氏は今後の計画を話します。
また、システム構築後のドキュメント作成についても、今後は『Forguncy』のドキュメント自動生成機能を活用して効率化していきたいと話します。
同社の業務に最適化された生産管理システムが『Forguncy』で構築されるのは、そう遠くない将来に実現しそうです。
全体まとめ
- システム導入に消極的な組織でも、『Forguncy』ならではの開発プロセスによりスムーズなシステム導入が可能になる
- 『Forguncy』によるシステム開発が業務におけるシステム活用の意識を変えるきっかけになる
- Excelから『Forguncy』への移行により業務に最適なシステム開発ができ、生産性向上が実現できる
ジオスター株式会社様
所在地 |
〒112-0002 東京都文京区小石川1-28-1 小石川桜ビル |
主な事業 |
- インフラ整備に使用するコンクリート製品および金属製品の製造販売。
- 上記製品に付帯する施工
|
設立日 |
昭和33年12月 日本プレスコンクリート工業株式会社(旧会社)設立 平成6年7月 社名をジオスター株式会社に変更 |
URL |
https://www.geostr.co.jp/ |
この事例の導入支援パートナー
株式会社ソルネット
1967年の創業より九州・中国地区において、製造業・プラントエンジニアリング業・公共・文教・環境・医療のお客様を中心に、幅広い業種・業務に各種ソリューション&サービスを提供しています。