有限会社平組(ひらぐみ)様は、建設・土木工事における「専門工事」を行う鹿児島県の企業です。特に足場の組み立てなど仮設工事に関して高い実績があり、計画から工事、運搬、仮設資材のリースまですべての業務を一貫して請け負っています。
今回、平組様でForguncyを採用して開発したシステムは「専門工事」に特化したコスト管理・受発注管理・請求/入金管理が可能となる基幹システムです。実は、平組様はこれまでシステム開発の経験は全くなく、一部の業務管理は手作業で行っていたほどのレガシー運用で工事業務を遂行していたとのこと。その平組様がどういう経緯で専門工事向けの基幹システムを自ら開発するに至ったのか、またForguncyを採用したのはなぜなのか。代表取締役 社長の平峰様とシステム開発を担当した岡元様、さらにシステム開発を支援したエス・ビー・エス株式会社の夜久様、谷崎様に詳しいお話しを伺ってまいりました。
「専門工事」に革新的なサービスとシステムを導入したい
「専門工事」に特化した管理システムを自社で構築された背景や理由を教えてください。
工事費の正確な原価計算がどうしても必要になったからです。仮設工事や足場の組み立てなどの「専門工事」では1つの現場に延べ何百人もの作業員が入ります。すべての作業員の作業時間や工賃、資材の仕入れ原価も把握しなければ、正確な原価は計算できません。
従来は現場の作業員に手書きの日報を提出してもらい、それをパソコンさえも使わず手集計して工事費を算出し、売上げを立てていましたが、何百人分もの工賃を手計算するには限界があり、いわゆるどんぶり勘定で原価管理を行っていました。景気が良いときはそれでも利益が出るのであまり問題になりませんでしたが、景気が悪化し赤字になるとどこに原因があるのか調べることすらできませんでした。
業績が悪化しても対策の打ちようがなかったというわけですね。
はい。そこでまず請け負った工事にかかる作業工賃などの費用を数値で把握するために、手書き日報と手集計を廃止しパソコンを使うことにしました。Excelで現場情報や人工(にんく)の動き等を数値化したものをVLOOKUPなどの関数を駆使して月末の支払い処理や請求処理ができるようにしたのが最初です。
ただ、日報は「Word風Excel」で作業員が現場から一旦事務所に帰り、2台のパソコンの順番待ちに時間を費やしながら、それぞれの入力スタイルで記録することのみに特化したもので、人工の数量を求めるのは日報を見ながらの手集計でした。
このころちょうど総務部門に岡元が入社し、データベースのアプリを使って日報フォームを作成し、各自に配布していたタブレットから入力したデータをExcelに取り込むようにしてもらい、現場の作業員が作業後すぐに現場から日報を提出できるようにするなどの改善を行いました。それらの結果、現場ごとにかかる費用をしっかりしたデータで把握して適切な経営判断ができるようになり、落ち込んだ業績も回復しました。
Excelでコストのデータ化を行い適切な経営判断が下せるようになった後、さらにForguncyでシステム化を試みたのはなぜですか?
原価管理と請求処理まではできるようになりましたが、受注に至る前の作業見積もりと請求後の入金管理は紙業務のままでしたのでそこもデータ化したかったのと、Excelでのデータ管理に限界を感じたからですね。工事案件はそれぞれ違うお客様、異なる資材、異なる工程で施工しますので、いろいろな案件に対応していくうちにExcelファイルが派生し、完全なデータの一元管理ができませんでした。さらに、データが増えてExcelの動作が重くなるとか、うっかりファイルを削除するという危険性もありました。
それともうひとつ。「専門工事」の実態に即して案件全体を一貫して管理できるシステムを「専門工事」業者である自分たちの手で作りたかったという点もシステム化の大きな動機です。
中小企業庁の「革新的ものづくり・商業・サービス開発事業」として、そのシステムが認定されたと聞きました。
はい。はじめは自分たちでシステムを開発するなどとは考えておらず、工事案件の原価管理ができるパッケージソフトウェアを探していたのですが、世の中にあるソフトは施工全体のコスト管理を行う一式工事向けのもので、専門工事の工程に適したものではありませんでした。そこで、世の中にないなら自分たちで作るしかないと思ったのです。最初はMicrosoft Accessで開発しようとしたのですが、ネットを検索していたら、ノンプログラミングでしかもExcelを使うのと同じ感覚でアプリを開発できるというForguncyを見つけ「これだ!!」と直感しました。
パソコンアレルギーの多い専門工事業界にとっては、きっと革新的なサービスになるだろうと本格的に取り組むことに決め、中小企業庁が実施している「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援」にも採択されました。おかげで資金補助を受けることもでき、Forguncyでの開発がスタートすることになったのです。今ではこのシステムのおかげで業務が大きく改善されました。
システム開発により具体的にどのような業務改善ができたのでしょう?
まず、お客様がOKした見積もりがそのまま受注案件になります。作業員はその案件の現場で行った作業を日報として提出するのですが、案件に設定した作業しか選択できないようになっています。以前は、現場判断だけで見積もり外作業を行ってしまうことがあり問題だったのですが、この機能により追加工事として請け負うかどうかをすぐに協議できるようになりました。
また、データの表記揺れによる計上の誤りがなくなりました。Excelを使っていたときは、作業員によって数字やカタカナを半角で入力したり、全角で入力したりバラバラで データが揺れることがよくありました。揺れはすべて人の目でチェックしていましたが、今回開発したシステムでは、一度入力された情報や項目は次回以降すべて選択式で入力できるようにしたため、チェック作業と集計ミスがなくなりました。
ビジネスの生産性も大きく上がったと思っています。以前は打合せの内容を社に持ち帰り検討するスタイルでしたが、今では、その場ですぐデータを確認し回答を出せるようになりました。このシステムの導入によりあらゆる業務において時間の節約と適切な経営判断ができるようになったと思います。
Forguncyはかんたんだけど、システム開発は難しい?
開発を担当された岡元様は、どのようなシステムを目指したのですか?
外作業で疲れて帰ってくる社員の負担を少しでも軽くできれば…というのが始まりで、入力をなるべく少なくし、項目選択で日報ができあがるような、とにかく誰でも簡単に操作できるわかりやすいシステムにしたいと強く思っていました。理想はスマホのゲームアプリでした。
Forguncyを使ってみて、使いやすいシステムを実現できそうだと思いましたか?
そうですね、Forguncyに付属しているサンプルアプリケーションのテンプレート充実したものばかりでしたし、Webサイトのナレッジベースの記事も機能を実装するのにとても参考になりました。例を挙げると、同じ日付の作業日報がすでに登録されていたら新規に登録したものでも自動的に既存のデータを更新するようにしたり、記録者ではないアカウントでは修正できないようにしたりというような活用ができました。
レコードがあれば更新なければ追加したい – Forguncy サポート
他にも、案件入力画面で取引先を選択するコンボボックスの一覧に受注の区分を付けた取引先だけをランクごとに表示されるようにしていますが、これも記事を参考にしました。
別テーブルのデータを条件としてコンボボックス型セルに表示するデータを絞り込みたい – Forguncy サポート
余談ですが、年賀状用に取引先一覧から抽出したものをあて名書きソフトに修正無く、重複しないようにExcelでダウンロードするボタンもおまけで作りました。Forguncyの拡張性の魅力ですね。
では、Forguncyを使った開発で難しいと感じたところはなかったのですか?
いいえ。Forguncy付属のテンプレートを見る限りでは、簡単に複雑なことができるのでこれはいいぞと思っていたのですが、事務作業を一連の流れでシステム化しようとする試みだったので、それをForguncyで作るにはどうするのがベストなのかを考えるのに時間がかかりました。また、社内ネットワークだけでなくインターネット上からも利用できるようにしたいけれど、サーバーをどうすればいいのかわからないとか…。Excelは使えてもシステム開発となると、ずぶの素人集団でしたので…(笑)
エス・ビー・エス様の支援はどういう点で良さを感じましたか?
技術的な面で非常に勉強になりました。開発したシステムでは顧客に対して受注した現場の見積から請求、支払、入金作業までを紐づけて作成することができるようになっていて、現場に関する情報を簡単に表示できます。このようなデータの関連付けのやり方はエス・ビー・エス様に支援してもらわなければ実現できなかったでしょう。また、エス・ビー・エス様の技を見て自分の開発作業に活かせたのもとても良かったです。
Forguncyはかんたんだけれど、システム開発は難しいところがあるということでしょうか。だからエス・ビー・エス様に支援を依頼されたのでしょうか?
前述しました「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」には期間の区切りがあったのですが、あのデータもこのデータも関連付けたいと考えていたら、ボリュームが大きくなってしまい、計画段階で弊社だけの作業では提出期限までの完成が難しいと判断し、Forguncyでのシステム開発の実績のあるエス・ビー・エス様にお願いいたしました。
システム開発企業から見たForguncyと開発支援
Forguncyを使ったシステム開発を途中から支援する形になりましたが、通常のシステム開発とはどのような違いがありましたか?
一般的な新規システムの開発案件では、まず、業務ロジックなどをヒアリングしてデータベースの設計を行います。そのあと画面を開発していきますが、今回のプロジェクトは作成途中で参加したため、画面を確認しながらデータベースの項目を追加していくという逆のプロセスになりました。ForguncyはExcel感覚でレイアウトをどんどん作り、データベースとの設定をすれば画面ができてしまうという手軽さと柔軟さがあり今回のような逆プロセスでの開発であっても対応することができます。それが素晴らしい。スクラッチ開発では1つの項目をデータベースに追加するだけでもその部分に関連した多くのプログラムや画面を修正し、テストする必要がありますので。
平組様が求めた「ゲームアプリなみ」の使いやすさをForguncyで開発する難しさはありましたか?
平組様は「使いやすさ」を本当に重要視されていたと思います。例えば、入力揺れを防ぐために普通なら新規に入力させるようなところでも既存データをコピーして入力させたいとか、印鑑の印影を画像として含めてExcelに出力したいという要望がありました。こうした機能はプログラミングによるカスタマイズを行わずに実現するには難しい部分もありましたが、最終的には全て対応できました。Forguncyはカスタマイズ性も柔軟だということですね。
平組様にお聞きします。Forguncyを通じてシステム開発企業と一緒に自分たちのシステムを作ることの良さを教えてください。
Forguncyの良さは、とにかくそのとっつきやすさと汎用性に尽きると思っています。我々のような中小企業では、費用的にシステム開発会社にすべてをお任せしてシステムを作ってもらうことができませんので、各社が自前で開発したほうがよいと考えています。しかし、そうすると今度はプログラミングの知識やスキルの問題にぶつかってしまう。Forguncyのとっつきやすさはこれらのハードルを確実に下げてくれるものだと思いますし、エス・ビー・エス様のような専門企業が支援してくれることで本格的なシステムも開発できます。私は、こういった形でのシステム構築はこれからどんどん増えると思います。
理想を求めて、さらなる改善
平組様にお聞きします。今回開発したシステムに点数をつけるとすれば何点くらいになるでしょうか?
先にも申し上げたように我々が目指しているのはパソコンが得意でない方でも直感的に使える「ゲームアプリなみ」のシステムですので、現時点の満足度としては85点くらいです。今のバージョンのForguncyで使える機能を考えると、あと5点はプラスの改善ができると思っています。それ以上は今後のForguncyの機能追加や改善で実現できるよう期待したいです。最終的には100点を目指します。
有限会社平組様
所在地 |
〒899-2522 鹿児島県日置市伊集院町飯牟礼2982番地 |
主な事業 |
建築・土木工事において、作業や養生用の足場を架設、撤去する工事を行っています。資料作成から工事、運搬、資材リースまでのすべての業務を自社直接工事にて対応しています。また、新築工事、リフォーム工事(塗装・防水・補修等)、解体工事、電気設備工事などの専門工事をエンドユーザーの要望に応じて施工しています。
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設立日 |
2004年12月22日 |
URL |
http://hiragumi.co.jp |
この事例の導入支援パートナー
エス・ビー・エス株式会社
30年に渡り培った多種多様な業務系アプリケーションの開発経験と、20社以上のForguncy導入実績から得たノウハウにより、最適なソリューションをご提供いたします。