※ 事例公開日:2024年09月03日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。
複数の保険会社の商品を取り扱う、乗り合い代理店を展開する株式会社オンワード・マエノでは、汎用的な契約管理システムでは管理しきれない業務をExcelで対処していたが、事業が拡大するなかで円滑に情報を共有するための仕組みが必要になった。そこで、顧客情報や契約管理、案件管理といった乗り合い型保険業のCRM基盤としてForguncyを採用。従来のExcelフォーマットを生かしたうえで自社の情報管理に適したしくみをForguncyで構築したという経緯について、代表取締役社長 内田 大介氏にお話を伺った。
【課題】汎用的な仕組みは難しい保険の乗り合い代理店、Excelでの情報管理が限界に
1974年に創業、複数の保険会社の商品を扱う保険専業の乗り合い代理店として事業を展開している株式会社オンワード・マエノ。20社の損害保険・生命保険を取り扱っており、個人法人問わず多くの顧客に安心を提供している。なかでも企業向けの保険を豊富に取り扱っており、介護施設などを運営する法人向けの保険をはじめに、宮城県内の介護福祉業界に多くの顧客を抱えている。また、保険の代理店業だけでなく、講師派遣や相談支援といったリスクマネジメントサービスや企業コンサルティング、個人ライフプランニング、セミナー開催まで、さまざまな形で各種保険選びを支援している。
保険業界では、現在でも紙や押印の文化が根強く残っており、デジタル化をはじめとしたDX推進が急務となっており、紙を中心とした同社の業務プロセスも改善が進められてきた。ただし、複数の保険会社の商材を取り扱う同社では、汎用的な契約管理の仕組みの枠に全ての情報を収めることは難しいと内田氏は説明する。
「特定の保険だけを販売するのであれば、その保険会社が構築したシステムを活用してお客さまの契約情報を管理することができますが、我々は20社ほどの保険会社の商材を扱っているため、保険会社の異なる複数の保険を契約いただく企業が多い。契約情報の管理だけでなく、案件管理や事故に関連した進捗情報など、お客さまを軸に管理できる最適な仕組みが存在していませんでした」。
代表取締役 社長
内田 大介様
そこで、市販の汎用的な保険契約管理のサービスを利用しながら、そのなかで管理できない情報やプロセスは全てExcelにて管理せざるを得ない状況が続いていたという。
「保険業界では、お客さまへの説明内容や提案、契約プロセスなどの情報を管理しながら、きちんとガイドラインのステップを踏んでいるかどうかの情報管理も必要です。汎用的なサービスでは全体的な管理ができず、必要な情報はExcel頼みにならざるを得なかった」と内田氏は当時を振り返る。
そこで、必要な情報管理のために内田氏自ら現場の要望に応じてExcelを用意し、関数を駆使するなどして情報管理を行ってきたが、契約企業名や保険商品名など繰り返し必要となる情報を異なるシートに何度も入力する時間と手間がかかる、複数人での同時編集が難しい、入力したファイルが破損するなど、Excelならではの課題が顕在化し情報管理の限界を感じていたという。
Forguncy導入前の課題と導入の経緯
- 保険の乗り合い代理店業務を適切に管理できるクラウドサービスやシステムが存在しない
- そのため、情報管理用のツールとしてExcelに頼らざるを得ない
- Excelファイルが複雑化し、社内での情報共有が難しくデータ入力も煩雑
【選定】Excelを生かしたWebアプリの仕組み、開発未経験の社長の目に止まったForguncy
そんなExcelを中心とした情報管理が続くなか、外部パートナーに既存業務をうまくシステムに移行する手立てがないか相談を続けていた内田氏。
「実のところ、長年の知見と改良で業務ロジックはうまくExcelで組み立てられていて、複数のファイルを開く必要があり煩雑ではありましたが、なんとか運用はできていたのです。なので、今のExcelによる仕組みをWebブラウザで利用でき、複数のシートあちこち参照せずに1つの画面で、業務に必要な情報を閲覧、入力できるような仕組みを希望していたのです」。
世の中には各種クラウドサービスを活用して情報管理できる無償のソリューションも数多く存在するが、極めて重要な個人情報を取り扱う同社だけに、金融庁のガイドラインに沿った形で厳格な情報管理が行える仕組みが求められていた。
「今のExcelがWebブラウザで利用できるというポイントと、きちんとアクセスログが管理できるものが求められました。また、ちょうどPマーク取得のタイミングだったこともあり、ガイドラインに沿って個人情報が適切に管理できるものも必要だったのです」と内田氏。
便利なクラウドサービスが選択肢から外れるなか、パートナーである株式会社セントからの提案があったのが、ノーコードでWebアプリを内製開発できるForguncyだった。運用していたExcelの完成度が高く、自動計算項目などで駆使していた関数をそのまま利用できることと、レコード件数が多くなることを見越したSQLを活用したデータ操作、外部DBとの連携なども含めた拡張性に富んだ仕組みとしてForguncyが提案されたのだ。
すぐにForguncyをトライアルして触れてみたところ、内田氏自ら開発できそうな感触が得られたという。
「Forguncyのアプリ作成方法はとてもExcelに似ていたことで理解しやすく、画面遷移リンクの貼り付けや、実行ボタンの作成なども含めて、アプリを動かすイメージがその場で把握できました。パートナーのセントさんの支援を得ながらであれば、なんとか行けそうだという実感があったのです」と内田氏。
Excelに慣れている現場にも展開しやすく、現場の意見を反映して管理したい情報やプロセスも内製化で実装できる理想的な環境だと考えたという。その結果、Excelに代わる業務基盤としてメシウスのForguncyが新たに選択されることになったのだ。
【効果】乗り合い代理店におけるCRM基盤としてForguncyをフル活用
案件管理や顧客情報管理、対応履歴管理とともに人事評価の仕組みを実装
Forguncyの導入当初から内田氏自ら時間を見つけてはコツコツとExcel業務をForguncyに置き換えており、今では「ONE(ワン)」と名付けたアプリで、顧客情報を軸にした情報管理を徹底。同社におけるCRMとなる基幹システムとして全社員が利用する業務基盤へと成長している。
環境整備と学習支援はパートナー企業の株式会社セントが行った。Forguncyの開発手法を学ぶ数回の勉強会のなかで簡単なアプリ制作の方法やデータのインポートエクスポート方法を学んだ後、内田氏が管理に必要な項目やプロセスの実装を継続して続けたとのこと。現在はおおよそ85%の機能がForguncyをベースに運用できる形になっている。
「新規の案件は全てForguncyで運用していますが、以前契約していた契約管理サービスから情報がエクスポートできないため、過去履歴を確認するためだけに塩漬けしています。来年度以降は最小限のライセンスに絞っていき、いずれは全てForguncyに移行していく計画です」と内田氏。
Forguncyで構築されたONEは、顧客情報を軸に各種情報を入力していく運用となっており、営業担当者が各自対応する案件を絞って表示する一覧ボタンなどが用意されているだけでなく、成績や予算、顧客、新規、異動、満期、未入金、不備など、それぞれタブにて情報を絞り込んで表示できるなど、必要な情報だけを抽出しやすくするといった工夫が施されている。また、業務上アクセスする頻度が高いWebサイトやサービスへのリンクも用意しており、ONEアプリへの利用頻度を高めるような導線づくりもポイントの1つだ。
具体的には、顧客の基本情報管理とともに、地図情報含めたハザードマップなどへのリンク、同社の営業担当者や顧客の拠点情報、旧システムからのメモ情報や損保や生保など種別ごとに分けた契約件数やその金額、詳細な契約一覧が1つの画面で管理できるようになっている。例えば自動車保険に関しては、事故が発生すれば事故受付のための情報を登録し、対応一覧画面から対応履歴をその都度入力するといった運用だ。また、異動と呼ぶ契約変更などの際は、適用する年齢が変更になったときなどに活用、更改と呼ぶ契約更新の際には、更新に対する対応履歴やその結果などを入力し、新たな情報を追加していくことになる。
「新たに契約が更新されると、社内計上というボタンを押下することで、新たな証券番号が付与された契約情報として追加されていきます。昔の契約情報に関連して請求が発生するようなケースもあるため、更改落ちや解約情報など過去の履歴も含めて全て情報を残して管理しています」と内田氏は説明する。
なお、ONE以外にも「JINJIN(ジンジン)」と名付けた人事評価の仕組みもForguncyにて構築しており、それぞれメンバーが期初に立てたMBOやコンピテンシーの目標に対しての達成度合いを入力していく仕組みとなっている。また、スケジュール管理や勤怠管理、各種申請などはグループウェアを使って行っている状況だ。
作業量の軽減と残業時間の削減、顧客満足度の向上などさまざまな効果を実感
実際にForguncyにて顧客情報の管理を実現したことで、二重入力を減らして1つの画面に情報が集約でき、作業量的にはパート2名分の仕事が吸収できるようになったと高く評価する。
「事故の受付時には、保険会社の仕組みに登録したうえで、印刷した情報を再度、顧客管理システムや事故管理用のExcelに打ち込むことが必要でしたが、今はONE側で事故情報の登録が完結します」と内田氏。
複数のExcelを同時に編集するような手間もなくなり、メンバーの残業時間削減にも大きく役立っている状況だ。かつて感じていたファイル破損などExcelの課題も解消し、ストレス軽減にも少なからず貢献している。また、入力が必要な情報が1つの画面に集約でき、新人が担当する場合でもヒアリング漏れがなくなるなど、教育の面でも効果が出ている。
「情報の不備が起こると、1件あたり30分ほど対応に時間がかかることも。年間で見れば不備件数が多く発生するため、それらロスする時間を減らせることも大きな効果の1つ」と内田氏は評価する。
顧客情報が全社員で共有できており、誰が問い合わせの電話をとった場合でも過去の情報や対応中の履歴を確認しながら、質の高い応対が可能になっている点も見逃せない。
「保険業界は歩合給の個人事業主として働くケースが多いですが、当社は固定給の正社員で雇用しており、顧客担当者不在でも問い合わせに対応できる体制を敷いています。契約更新のご連絡をいただいたときには、事故対応中の状況もすぐに把握でき、一言声がけしやすい。情報にアクセスしやすいForguncyで基盤が整備できたことで、お客様満足度につながっていると考えています」と内田氏。
顧客向けのアンケートでもスピーディーな対応についての評価の声が多く寄せられており、Forguncyが満足度維持向上の一助となっているわけだ。
Forguncyそのものについては、開発の経験が全くない内田氏であっても業務基盤としてのアプリ開発が可能になるなど、想像以上のことが実装できたことについて満足しているという。
「本来なら連携も含めてもっとできることは多いと思っています。その意味でもものすごく可能性を感じる仕組み。作っているとやりたいことが形になる面白さを持っているツールではないでしょうか」と内田氏。
今回Forguncyの提案から導入支援を行った株式会社セントは、OA機器やサプライ品のメンテナンスなども含めて長年にわたり同社のオフィス全体をサポートしてきた。
Forguncyを提案したことについて日野氏は「1からシステムを構築し直すよりも、乗り合い保険業の業務エッセンスが凝縮されたExcelファイルを最大限活かすソリューションとしてForguncyが最適だと思いました」という。
また、実際に構築の支援を担当した山崎氏も「内田さんは、業務内容を熟知したうえで、Excelを使い慣れていたこともあり、習得がとても早かったです。ご自身で色々と試して必要な機能をどんどん実装されていったのは驚きました」と印象を語る。
株式会社セント
DX推進ユニット 取締役部長 日野 清隆様(左)
DX推進ユニット 山崎 亮一様(右)
内田氏は株式会社セントについて「私だけではForguncyにたどり着くことはできなかったはず。長年オフィス全体の支援をいただいているセントさんだからこそ、我々が必要としていることをくみ取っていただき、最適なソリューションをご提案いただけました。とても感謝しています」と高く評価する。
更なる利便性の向上を目的に、社員からの改善要望も受け付けており、Forguncyに関する勉強会やサンプルアプリの提供など、さまざまな支援を現在でも継続して実施している。IT未経験だった内田氏がアプリ開発まで実施できたのは、株式会社セントの支援があったからこそだと力説する。
顧客とのコミュニケーション基盤やMAの仕組みとしての活用も視野に
今後については、現場の要望に応じてさらなる機能の追加拡充をしていくためにも、Forguncyを扱えるメンバーを育成していきながら、顧客と情報共有できるポータル的な機能を実装することでコミュニケーションの円滑化を図り、さらなる顧客満足度向上につなげていきたいと意欲的だ。
「お客さまでも対応中の状況を確認したいはずで、そのための情報基盤として活用できれば理想的です。我々経由で保険に加入いただいていれば安心だという気持ちを維持継続できるような環境づくりをさらに進めていきたい」と内田氏。
また、Forguncyに蓄積した情報をうまく活用し、例えば事故の多いお客さまには事故を減らすためのサービスをお勧めする、地震が多くなれば地震保険に入っていないお客様に自動的にメールを送信するなど、マーケティングオートメーション的な仕組みとの連動なども実現したいという。さらに、FBデータとの連携による入金消込や外部企業データベースと連動による顧客情報入力の自動化、グループウェア上の日報連携など、業務効率化につながるさまざまな取り組みについても前向きに検討したいという。
個人情報管理の観点からオンプレミスでの運用を行っているが、現場からはスマートフォンから顧客情報や対応履歴の確認をしたいというニーズもある。「VPNでつなぐなどいろいろやり方はあるのかもしれませんが、情報管理の徹底も含めてどうしていくべきなのかは検討中です。いずれにせよ、現場の働き方を良くしながら、お客さまへのスピーディーな対応に貢献できる環境整備をこれからも進めていきたい」と今後について語っていただいた。
【Forguncyの効果】
- 保険の乗り合い代理店業務を適切に管理できる顧客管理システムをノーコードで内製できた
- 顧客情報や契約情報を社員全員で共有でき、問い合わせ対応がスムーズになった
- データ入力作業が激減し、他の業務を行える余裕ができた
株式会社オンワード・マエノ
本社所在地 |
〒983-0852 宮城県仙台市宮城野区榴岡5-1-35 |
主な事業 |
- 企業コンサルティング、生命保険、損害保険代理店、個人ライフプランニング、セミナーの開催
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設立日 |
1974年6月 |
URL |
https://onwardmaeno.com/ |
この事例の導入支援パートナー
株式会社セント
「お客様の元気な未来を新しい価値で共創する」をミッションに掲げ、顧客に最適なITソリューションを提案。Forguncyのシステム構築・運用を宮城県仙台市を中心にサポートしている。