株式会社アルバック様

DX人材を育成しながら業務システムの開発効率と現場の生産性向上を実現。
製造業のペーパーレス化、脱Excelを強力に推進するForguncy

株式会社アルバック様

※ 事例公開日:2023年6月7日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

真空技術を武器にFPD製造装置や半導体製造装置などの開発・製造を手掛けている株式会社アルバックでは、紙を中心とした現場業務のデジタル化を推進するべく、ノーコードWebアプリ開発プラットフォーム「Forguncy」にて現場業務の改善を進めています。その経緯について、DX企画推進部 情報システム室 九州Group 係長 冨田 和喜氏および同グループ 中村 健太氏、マテリアル事業部 製造部 藏野 一道氏にお話を伺いました。

【課題】合併で顕在化したデジタル化への要求、開発者不足への対処が急務

合併によってモノづくり力強化を推進、IT基盤の統合やDX人材の育成に取り組む

1952年に真空装置の輸入販売を目的として創業、長年に渡り培った高度な真空技術をベースとした多様な事業を展開し、幅広い業界にソリューションを提供している株式会社アルバック。FPD製造装置をはじめ、半導体および電子部品製造装置を中核製品として中国や韓国、欧米に向けたビジネス展開により、海外売上比率が70%を超えるなどグローバル企業として市場をけん引しています。

そんな同社では、中期経営計画「Breakthrough 2022」において、2022年に生産子会社だったアルバック九州株式会社およびアルバック東北株式会社を吸収合併することで生産技術力を取り込み「モノづくり力強化」を推進しています。また、IT基盤の整備に向けては、各グループ企業で個別に構築されていた基盤の統合を進めており、事業継続計画を策定したうえでクラウド移行を加速させ、DX企画推進部が中心となって現場のITリテラシー向上やテレワーク推進など、さまざまな施策に取り組んでいます。

現場業務のデジタル化が急務に、限られた人的リソースでWebアプリ開発が必要に

合併前のアルバック九州では、2010年にアルバックマテリアル株式会社およびアルバック精機株式会社を吸収合併した経緯があり、現場のデジタル化が不十分だったことによる課題があったそうです。

「当時のマテリアル事業部(旧アルバックマテリアル株式会社)では、製品の製造データは紙とExcelファイルによる管理が中心だったため、製品に関する製造データを探すことが難しく、顧客から製造データの提出を求められたときも迅速に回答できないなどの課題がありました。一方、アルバック九州には、Visual Studioを使ってWindowsフォームによる業務システムを構築するなどITを内製する社風がありましたので、マテリアル事業部の製造データの電子化を急務と考えてシステム構築に取り組むことになったのです」と冨田氏は振り返ります。

しかし、当時の情報システム課(旧アルバック九州)は少数精鋭だったこともあり、人材の観点からも、現場のIT化を効率的に進める根本的な施策が求められました。

「製造現場の生産データを電子化し、業務効率化を進めるためには、パソコンにインストールして使うWindowsフォームアプリではなく、スマートフォンなどのマルチデバイスで利用できるWebアプリにするなどシステム要件は複雑です。にもかかわらず開発人材は限られていたので、効率よくWebアプリを作成できる仕組みを検討することになったのです」と冨田氏。

DX企画推進部 情報システム室 九州Group 係長 冨田 和喜様

DX企画推進部 情報システム室 九州Group 係長
冨田 和喜様

導入前の課題

Forguncy導入前の課題と導入の経緯

  • 紙とExcelを中心とした製造データの管理方法では必要な情報を迅速に探すことができない
  • 複雑な要件のシステムを構築できる人材が少ないため、効率よくIT化できるソリューションが必要
  • 作業現場で利用できるスマートフォンなどで使えるシステムが必要

【選定】“できない、詰んだ” 状態が回避できるForguncy

そこで、まずは情報システム課内で試験的に使うことを目的に、ローコード・ノーコードツールを中心にソリューション選びを行いました。その際注目したのが、ノーコードWebアプリ開発ツール「Forguncy」でした。

基幹システムなどのデータベースとの連携と処理が正しくできて、マルチデバイスで利用できるものが前提でしたが、選定のポイントとしては複雑な現場業務をシステムに落とし込めるかどうかにあったとのこと。

「複数のソリューションをテストしてみたところ、なんとかなりそうだったのがForguncyでした。ノーコードやローコードツールで最も困るのはシステム要件を満たせず“できない、詰んだ”という状態になってしまうこと。Forguncyは唯一、“詰んだ” 状態に陥らないソリューションだったのです」と語るのは中村氏。

DX企画推進部 情報システム室 九州Group 中村 健太様

DX企画推進部 情報システム室 九州Group
中村 健太様

アルバック九州では、以前別のノーコードツールを利用していた時期がありましたがデータベースとの連携が十分ではなくWebブラウザで使えるものの、使い勝手の良い入力画面を作り込めず製造業の現場で使うシステムの要件は満たせなかったそうです。また、その他に検証したいくつかのソリューションでは、データベースに直接接続できず、CSVを介して情報を引き出さなければならないなど、同社がイメージした仕様を満たせませんでした。

こうして、情報システム課で活用するツールとしてForguncyを試験導入することに。まず、サンプルとして安全点検記録アプリや装置事業の検査記録アプリといったExcelで運用していた業務をシステム化しForguncyを試したそうです。

実際にアプリ開発を行ってみると、癖はあるもののForguncyはデータベースとの接続がスムーズで使い勝手も良いことを実感した同社では、マテリアル事業部からの要請に応じて紙とExcelファイルを中心とした現場業務のデジタル化を目指すことになりました。最初に着手したのは、アルミ溶解炉の運転日誌です。

マテリアル事業部の藏野氏は当時の運転日誌について「溶解炉でアルミのインゴットを溶かす作業工程で生じる温度や時間などの各種データを紙に記録し、それをExcelに入力するといった、工程ごとの日々の記録業務がアナログで行われていました。Excelに転記するのにも時間がかかっていたのですが、顧客からデータの提出を求められると、該当するExcelを探し、データを目視して集約するのに多くの時間を要していました。」と説明します。

マテリアル事業部 製造部
                                藏野 一道様

マテリアル事業部 製造部
藏野 一道様

実はこの時、情報システム課にはある考えがありました。情報システム課が現場から運転日誌の業務要件を聞き、紙とExcelで行っていた工程をForguncyでシステム化することは直ぐにもできますが、その方法では現場のデジタル化への意識もかわらず、IT人材も足りない状態のままです。そこで、現場担当者の藏野氏が主体となって運転日誌をシステム化してもらうことを提案したのです。

藏野氏にはプログラミング経験はありませんでしたので、情報システム部門が支援とForguncyの使い方を指導し、協業してシステム化を進めていく方法です。

「現場のITリテラシーを向上させてDX人材を生み出していくためにも、我々がシステムを構築してあげるのではなく、現場の社員が自分たちの作業を改善できるシステムを自分たちで構築する仕組みが必要でした。Forguncyであれば十分可能だと考えました」と中村氏は当時の考えを述べます。

こうして業務部門が現場業務の改善に貢献するツールとして、Forguncyが現場に展開されるようになります。

【効果】現場業務のデジタル化促進のために内製化できるツールとして活躍するForguncy

情報システム部門は教育指導に徹し、現場が中心となってアプリ開発

Forguncyによるアプリ開発は現場が主体となり、情報システム部門は社内との連携に必要なテーブル作成の支援とともに、教育指導を通じてフォローしていく体制で行われました。

具体的には、現場から選抜されたメンバー8名ほどがアプリ開発の中心を担い、情報システム課と藏野氏のような現場担当者が業務要件を一緒に検討し、Forguncyでアプリ化することでメリットが得られるかどうかを議論したうえでシステムの仕様とゴールを共有化して目線を合わせていくというものです。

構築するシステムの中身が決まれば、情報システム課が基幹システムのテーブルとForguncyを連携させ、Forguncy内に必要なテーブルを整備したプロジェクトファイルを現場に渡します。アプリケーション開発は現場主体で行い、デバッグ機能を利用して情報システム課とレビュー&修正を繰り返します。完成したら、情報システム課側でForguncyサーバにアップロード。これにより管理者のわからない野良アプリを防止することが可能な運用になっています。

こうして、紙とExcelで管理されていたアルミ溶解炉の運転日誌は、タブレットに直接データ入力できるWebアプリが完成。システムの構築にかかった期間は6か月ほどでした。開発を担当した藏野氏は「ForguncyはExcelのように使えるツールのように感じましたが、システム構築など経験したことはなかったので、最初は戸惑いました。とにかく毎日30分Forguncyを触ることにして、躓いたら情報システム部門に聞くという感じでした」このように振り返ります。

「情報システム部門としては、全体のデザインと制作フォロー、Forguncyの使い方などを通じて支援を行い、実際のアプリは現場に作ってもらう形にしており、現場にもForguncyで開発できるメンバーを育成しています」と中村氏。

効果の概念図

現在では、マテリアル事業部を中心にForguncyが活用されており、主に社内で保持しておきたい準生産データをターゲットに、数十本ものアプリが作成されています。各工程における温度や圧力、粉の混合記録といった製造過程のデータをForguncyに記録し蓄積し、長期的な視野で各工程において業務をデジタル化し、いずれは必要なデータを繋げた一元化を目指しているそうです。

現場業務では100日あまりの工数削減、開発工数も劇的に向上

Forguncyによってデジタル化を推進したことで紙に記録していた業務はタブレットに移行され、Excelへの転記作業もなくなり、年間で100人日の工数削減につながりました。また、現場と協業してForguncyでシステムを構築する体制により、システム開発効率も上がったといいます。

Forguncyで開発した運転日誌アプリが実際の現場で利用されている様子
▲ Forguncyで開発した運転日誌アプリが実際の現場で利用されている様子

「現場の作業効率だけでなく、我々の開発効率も間違いなく向上しています。以前なら1か月ほどは必要だったアプリも、今では1週間程度で開発できるようなレベルになっています」と冨田氏。

中村氏も「これまでForguncyで数十本のアプリを作りましたが、もし我々がスクラッチで開発していたら、これほどの数は作れなかったと思います」と評価の声を寄せています。さらに、当初から狙っていた、組織が自立してシステム開発できる環境整備の観点でも「現場の社員が、業務をシステム化することで自分たちの仕事を自立的に改善できるという思考に至るという面ですごく効果が出ていると思います。まさに現場のITリテラシー向上にForguncyが寄与しています」と中村氏は評価しています。

これを裏付けるように、現場担当の藏野氏は「製品加工の工程では油を使う機会もあり、汚れたり破れてしまったりといった紙の運用から脱却できたことは大きいです。また蓄積されたデータから、1か月の生産高や部材などの使用量も自動的に出せるようなアプリも作っており従来に比べて情報活用が進み作業しやすくなっています。他の社員からも、すごく便利になっているし、もう紙には戻れないと言われることがよくあります」と教えてくれました。

まだ紙での運用が残っている部分もあるそうですが、いずれはペーパーレスに向かっていくためにForguncyをさらに活用していきたいと意欲を見せています。

【Forguncyの効果】

  • Forguncyでシステム化したことにより紙業務を廃止し年間100人日の工数削減
  • システム開発の効率化を実現
  • 現場組織におけるデジタル化、IT化への意識を醸成

充実したサポートを評価、内製化を進めるツールとして最適

Forguncyは非IT人材が全く学習せず使えるという程簡単ではないものの、システム部門がきちんとフォローする体制を整備することで、現場でもシステムを構築できる環境を作れることが大きいとのこと。

「フルスクラッチでプログラム作成できる人材を育成するより学習コストが低いので、内製化を進めるツールとして最適です。 ”できない、詰んだ“ 状態に陥ることを最も恐れていましたが、これまではそういうこともなく、作りたいシステムを実現できています。Forguncyを選択してよかったと実感しています」と中村氏。

テクニカルサポートの面でも、高く評価しています。
「ときには実現が難しいことも出てきますが、サポートに相談すると別の手段での実装方法を提案いただけたことも。機能がなくとも、サポートのほうである程度解決の道筋を示してくれるなど、本当に助かっています」と中村氏。

冨田氏も「ツールに対する機能追加も、我々ユーザーの声をきちんと聞いていただき、それを実際に加えてリリースしていただく機会も多くありました。手厚く支援いただいて感謝しています」と評価します。

Forguncyの開発を行っている藏野氏は、IT未経験ながらその扱いやすさについてこのような感想を持っています。

そもそもプログラム開発経験はなくExcelで入力ができる程度のリテラシーでしたが、少しずつ慣れていくことで、初心者でも開発できるようになりました。情報システム部門のフォローがあったことも大きいですが、Forguncyの使い勝手の良さが今につながったと考えています。」

他グループ展開を加速、現場主導の業務改善ツールとして普及を進める

現在は九州工場における現場のデジタル化に貢献しているForguncyですが、合併を機に他の拠点への展開も視野に入れているとのことです。

「今はマテリアル事業部の九州工場を中心に展開していますが、千葉や八戸などでもマテリアル事業を展開しています。合併を機に、同じような事業を展開している他の現場にもForguncyを導入し、ペーパーレス化を促進していきたい」と冨田氏は期待を寄せています。

また、ペーパーレスや脱Excelのための代表的なツールとしてForguncyを位置付けていることから、エンドユーザーコンピューティング(EUC) として現場展開が可能なForguncyをさらに拡大させていきたいとの考えです。

「すでに他のグループからも選抜メンバーを出していただき、教育を始めています。生産系のコアシステムとまでは行きませんが、フレキシブルかつスピード感をもって、現場主導で業務改善していけるツールとして広く普及させていきたいですね」と今後についても語っていただきました。

株式会社アルバック様

ロゴ:株式会社アルバック様
本社所在地 〒253-0071
神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地
主な事業
  • ディスプレイ・半導体・電子・電気・金属・機械・自動車・化学・食品・医薬品業界及び大学・研究所向け真空装置、周辺機器、真空コンポーネント、材料の開発・製造・販売・カスタマーサポ−ト及び諸機械の輸出入。また、真空技術全般に関する研究指導・技術顧問。
設立日 1952年8月
URL https://www.ulvac.co.jp/index.html
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