日本ゼオン株式会社様

ForguncyによるDX推進で業務とデータベースを理解しアプリ開発もできるスタープレーヤーを社内に育成。きっかけは材料開発高速化のためのデータ蓄積

日本ゼオン株式会社様

※ 事例公開日:2023年11月29日
※ 事例記事の内容や所属は取材当時のものです。

合成ゴムや高機能樹脂の製造・開発をメインに事業展開する化学メーカーの日本ゼオン株式会社では、DX推進の取り組みとしてForguncyタスクチームを組織し、業務部門と伴走しながら業務部門内でシステムを内製できるデジタル人材の育成に力を入れている。そのためのノーコードツールとしてForguncyが大きく貢献しているという。その経緯についてデジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ 細井 悠貴(はるき)氏、同部参事 山野 寛子氏、同部 青木 高人氏、同部ビジネスクリエーショングループ参事 追中 千晶氏、アジャイル開発推進室 細井 あや氏にお話を伺った。

【課題】材料開発の高速化に向けたマテリアルズ・インフォマティクス(MI)など高度なデータ活用の取り組みが急務に

1950年の創業以来、化学の力を源泉に高度かつ独創的技術によって世界に誇る製品を数多く生み出している日本ゼオン株式会社。原油から分離したナフサをもとに精製される炭化水素類を活用した合成ゴムなどのエラストマー素材事業や光学フィルムをはじめとした高機能材料事業を展開しており、世界19の国と地域で事業を推進。ニッチな領域ながら革新的・独創的技術を武器にオンリーワン・ナンバーワンとなる材料製品を次々と市場に送り出している。

そんな同社において全社的なDXを推進しているのが管理本部 デジタル統括推進部門だ。社内の各部署と外部からITに明るい人材を招聘し、全社的なDXを推進する組織として内製化を軸にデジタル化を強力に進めている。

DX推進のきっかけとなったのは2021年。当時、同社の研究所では材料開発を高速化するためにマテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)などを目的としたデータマネジメントシステムの構築に取り組むことになったという。実験や物性試験から得られる膨大なデータを蓄積し、機械学習により素材の構造や配合を予測することで実験工数の削減を図り材料開発を高速化することがMIの取り組みとしてよく知られている。多くの企業がMIに期待し取り組みを進めており、同社でも研究所のメンバーおよび新入社員向けにpythonなどのプログラミング研修を行い、データ解析スキルを身に着けてもらったという。しかし、いざ機械学習でデータを解析しようとすると、肝心のデータがMIで利用できるような形式にまとまっていなかった。

「研修を受けたメンバーからは、“データ無い問題”と認識されていましたね。大半の組織の実験結果は各研究者がそれぞれ独自に作ったExcelで保管されていたのでフォーマットがバラバラ。過去の実験記録にいたっては紙で保管されていて、一生懸命キャビネットを探しても目当ての資料が見つからないという状況もあったようでした」と細井 悠貴氏は当時を振り返る。

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ 細井 悠貴様

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ
細井 悠貴様

そこで、まずはMIを実現するため、データベースに構造化されたデータを蓄積できるデータマネジメントシステムを構築することになった。しかし、ここで次の課題が生まれる。ユーザーインタフェース開発の工数問題である。MIのためのデータベース群は細井 悠貴氏を始めとするITの知見があるデジタル戦略企画部と研究所のデジタル研究開発推進室のメンバーで構築できた。しかしデータを入力する画面や、登録されたデータを参照する画面などのユーザーインタフェースは研究者の要件を定義して仕様作成からコーディングまで行わなければならない。仮にそのようにして作った入力画面がもし使いにくければそのシステムは廃れてしまい、データが溜まらない。細かな調整を繰り返して現場の要望にフィットした入力インタフェースを徐々に作り上げていく仕組みは当時のDX部門にはなかったのである。

「専門的な知識が少ない場合でも、自分たちが使いやすい入出力インタフェースを自分たちの手で構築できる仕組みが必要でした。その解決策としてローコード・ノーコードツールに注目したのです」と細井 悠貴氏。そこで複数のツールを候補に挙げ、同社の要件に照らし合わせて検討を進めたという。

導入前の課題

Forguncy導入前の課題

  • 社内に再利用可能なデータベースがなかった
  • 業務データがExcelや紙に分散していた
  • データベースを整備することはできたが、ユーザーインタフェースの開発工数が負担

【選定】現場自らが入出力インタフェースを開発できる環境としてForguncyに注目

研究所の要件に合うユーザーインタフェースを研究所のメンバー自らが作成できるノーコード・ローコードツールを選定する際に重視した機能について細井 悠貴氏は次のように述べる。

「当時の研究所ではExcelによる実験記録の管理が多かったので、Excelから簡単にデータを移せるツールが理想的でした。また、ツールの中にデータが閉じ込められることなく、我々が構築したデータベース群と連携できること、Webアプリを考えていたので負担なくWebサーバーに展開できることを希望していました」

こうした要件にフィットしたのがForguncyだった。

「ForguncyはExcelを使うのと同じような感覚で入力画面が作れたり、Excelからデータをコピー&ペーストしたりできるところが優秀だったのでExcelに慣れている社員には親しみやすく、習熟が早いだろうと思いました。データベースは独立させて解析・分析ツールからアクセスできるようにしたかったのでSQLサーバーと直接接続できる点もポイントでした」

さらに、Forguncyの設定画面やメニューで使われている文言も現場にとって負担がないと感じたそうである。

「システム開発で使う専門用語で操作メニューが構成されていると、プログラミングを経験したことがない人の多くはついていけません。ForguncyはExcelのメニューとよく似たことばで設定画面が構成されているので、現場の研究者にとっても負担が少ないと思いました」

Forguncyの新規作成画面 Excelライクな見た目とメニューで親しみやすい
▲ Forguncyの新規作成画面 Excelライクな見た目とメニューで親しみやすい

ほとんどの機能はノーコードで設定できる一方で、高度な制御が必要なときにはJavaScriptによるコーディングも行えるのでITに通じたメンバーであれば複雑な仕組みも開発でき、しかも専用Webサーバーにより迅速にWeb公開できることも高い評価に繋がった。

細井 悠貴氏は90日間のお試し期間中に、研究所のメンバーにForguncyを使ってもらい、データベースへのデータ登録や参照を行うユーザーインタフェースを持ったWebアプリの開発が可能かどうかを判断することにした。

「難しい場合は我々が支援するつもりで、最初から現場にアプリを作ってもらいました。すると、シンプルなものでしたが数日でプロトタイプが構築できたのです。特に作り方を教育するようなこともせずに作成できたのでForguncyは業務部門であってもデータベースと連携したシステムを開発できるツールだと改めて実感しました」と細井 悠貴氏。

効果の概念図

その後、データマネジメントシステムは研究所のメンバーの手により開発が進められ、プロトタイプの作成からおよそ2ヶ月で検証を開始できたという。Forguncyはデータの入力画面とデータベースへの登録、解析された結果データを画面に出力する部分に使われている。構造化された実験データを蓄積できるようになったことで、MIによる配合レシピの予測が可能になり実験工数の削減にも寄与できた。データマネジメントシステムの構築に関する取り組みは社内表彰で受賞を果たしたとのことである。

【効果】フルスタックエンジニアのような一連の開発を担える人材の育成に貢献するForguncy

データドリブンを理解するDX人材の育成にForguncyを活用

研究部門での実績を踏まえ、デジタル統括推進部門では業務データを蓄積・可視化・再利用することで経営判断に活かすデータドリブン経営を方針として打ち立て、追中氏を始めとするForguncyタスクチームを結成して本社部門(人事、経営、経理、営業)、工場部門に向けた全社的なデジタル基盤整備に取り掛かっている。そこで重点課題として挙げているのが「DX人材の育成」だという。これにForguncyを活用しているとのこと。MIのためのデータ入力システムを研究所のユーザーが短期間で作ることができたように、Forguncyを他の部門にも使ってもらうことで、自分たちの業務データを自らデータベース化できるパワーユーザーを育成し、データドリブン経営を推進しようと考えたのである。

そこで、Forguncyをデジタル統括推進部門推奨のノーコードシステム開発ツールと位置づけ、各部署から業務改善意欲のある人材を募り、業務整理のアプローチとデータベース教育、さらにデータベース構築を一緒に行ってからForguncyの使用方法をハンズオンで指導する丁寧な伴走型の開発支援を提供することにした。すると、全社から予想を上回る数のForguncyの利用申請が寄せられたという。

たとえば、育休など行政への手続きをメールで申請する業務をForguncyでWebアプリ化して効率をあげたいという声や、各部署から情報を集める際にForguncyに直接入力してもらって集計をシンプルにしたいといった声が挙がった。他にも、予算と実績の進捗状況を可視化するための予実管理に使いたい、部門ごとのExcelに入力された実績を転記する業務をForguncyに置き換えたい、基幹の生産管理システムでは扱えていない生産データをForguncyに蓄積してExcelや紙での管理をやめたいといった要望が複数組織から集まったという。

Forguncyは業務改善の視点を養うことに貢献、スタープレイヤー誕生の立役者に

実際のところ、現場の視点では業務データをデータベース化したいというよりも、Excelの転記をやめたい、集計を楽にしたいなど、作業負担を軽くする目的での応募が多かったのだが、Forguncyタスクチームがそうした案件にしっかりとした教育プロセスで伴走しデータベースを共創することで、業務プロセスとデータの関係に理解を深めてもらう効果があると考えている。

Forguncyタスクチームリーダーの追中氏は「データベース作成の部分で停滞することが多いですが、最後まで我々が一緒に並走しながら、最終的には現場で自走してもらう形でプロジェクトを進めています。Forguncyでデータフローを可視化してみることで、どこが今の業務で課題なのかとか、他の業務にもこのデータが使えるのではないかという視点を持ってほしいと思っているので、これはデジタル教育の一環だと捉えています」という。

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスクリエーショングループ 追中 千晶様

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスクリエーショングループ
追中 千晶様

工場部門のデジタル化支援を担当する山野氏も「今どういう流れで業務を行っているのか、これをどうしたいのかを一緒に考えるのですが、実際にForguncyを使ってみることで、現場の方が自分の業務を見つめ直し、どのようにシステム化したら効果が出るのかを考える機会になっていると思います」と述べる。

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ 山野 寛子様

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ
山野 寛子様

Forguncyタスクチームが社内に提供しているノウハウ集。これもForguncyで開発されている
▲ Forguncyタスクチームが社内に提供しているノウハウ集。これもForguncyで開発されている

実際に人材育成という視点で成果を上げている点があるとタスクチームが評価するのは、研究所での導入から2年の間にスタープレイヤーが何人も社内に誕生したことだ。

「これまでExcelに精通している誰かがマクロを駆使して業務改善ツールを作ったとしても、Excelに組み込まれる特性上、自動化が中心になりがちでBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の観点での検討は難しい状況でした。ですが、今Forguncyを使いこなしているメンバーは、BPRも推進でき、かつDB設計やForguncyでアプリ作成もできます。いわゆるフルスタックエンジニアのような能力を有した人材に育っています。会社にとって価値ある人材が育成できることが、まさにForguncyの真の強みだと実感しています」と細井 悠貴氏。

タスクチームでは、汎用的で使いやすいForguncyだからそのようなパワーのあるユーザーを孤立させずに支援できる環境が実現できているのだと認識しており、追中氏はForguncyを“社内パワーユーザー育成ツール”と評するほどだ。

ビフォーアフター

そして、Forguncy自体の使いやすさについて、追中氏とともに本社部門のデジタル化を支援している細井 あや氏は「いい意味で“おもちゃ”のようです。これならできるかも、とすぐに思ってもらえるほど、導入のハードルが低いツールです。Excelマクロが組める人には最高のツールですし、設定ベースで機能の実装ができるので初めてシステム開発に挑む人にも優しい。目をキラキラさせながら、みんな楽しそうに触っています」と語る。

デジタル統括推進部門 アジャイル開発推進室 細井 あや様

デジタル統括推進部門 アジャイル開発推進室
細井 あや様

青木氏も「電子帳票やBIツールといったデータを簡単につなげることができるようなツールであっても、業務部門の人にしてみれば、やったことがないことを強いられていると感じるのですが、Forguncyは見た目がExcelライクなだけに、誰でもすんなり理解しやすいので自然と仕組みが出来上がっていく感覚がすごい。それに、画面上のUIはコピー&ペーストで他の画面に拡張できますし、一度作ったシステムと同じようなシステムを作りたければプロジェクトファイルをコピーして、修正するだけで完了です。展開のしやすさも大きな魅力です」と絶賛する。

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ 青木 高人様

デジタル統括推進部門 デジタル戦略企画部 ビジネスマネジメントグループ
青木 高人様

現在は、研究所、本社、工場などの部門で60名弱のメンバーがForguncyを利用。50ほどのプロジェクトが動いており、MI領域におけるデータ分析・活用をはじめ、現場で行われているExcel業務の置き換えなどさまざまな用途にForguncyが登用され始めている。多くのプロジェクトがプロトタイプの段階で本稼働はこれから。今は現場にForguncyを広めていくステージだというが、各プロジェクトに用意したデータベースはデジタル戦略企画部が一元的に管理しており、業務部門のユーザーはデータベースサーバーの管理はせず、業務データベースの設計や構築に集中できるようにしているとのこと。

データの価値を考えるフェーズに移行するとともに、アジャイル文化のさらなる醸成に期待

タスクチームの取り組みにより各部門でデジタル化の意識醸成がすすみ、データベースに情報が蓄積し始めたところだが、今後はデータドリブン経営を推進するためにデータの価値を考えるフェーズを展開していきたいという。

「業務の見える化・データベース化を優先的に進めていますが、いずれデータの価値を考えるフェーズは必ずやってきます。教育を通じてデータの価値を意識できる視点を養っていくなかで、引き続きデータの投入インタフェースとしてのForguncyが重要な役割を果たすはず」と追中氏。究極的には、基幹システムへのデータ投入も含め、全社的なデータ入力インタフェースとしての広がりについても期待を寄せている。

また、アジャイル開発を浸透させ開発スピードの向上といった点もForguncyに期待する部分だ。
「プロトタイプを作っていきながら、それを本番システムとしてブラッシュアップしていくようなアジャイル的なアプローチを社内に醸成していくことにForguncyは大きく貢献してくれると考えています。現在は本社中心での活用ですが、全社的にForguncyによるアジャイル文化を広めていくような役割を今後も期待したい」と今後について細井 あや氏に語っていただいた。

【Forguncyの効果】

  • Excel感覚のノーコードツールなので入力システムを業務部門で手軽に開発できる
  • データベースはDX部門が伴走して設計・管理することでデータが分散しない
  • 社内の様々な部署にBPRの観点を持ち、アプリ開発もできるDXプレイヤーが育成

日本ゼオン株式会社様

ロゴ:日本ゼオン株式会社様
本社所在地 〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-2
主な事業
  • 熱や油に耐えうる特殊合成ゴムのパイオニアとして世界をリード。 また、近年普及が進む電気自動車向けのリチウムイオン電池材料や、センシングカメラの材料等も手掛け、自動車産業の発展に貢献している。
設立日 1950年4月
URL https://www.zeon.co.jp/
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